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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

美味しいチーズ(Suede)はどこへ消えた?

CD Review

Bloodsports

Suede「Bloodsports」★★★☆☆


賞味期限切れのチーズ

Suedeが再結成した。
少し前から海外のフェスなどで単発的に出演していたようだが、2013年に入り、ついに新作のアルバムまで陽の目を見ることとなった。
ファンとしてはこれほど嬉しいこともないだろう。
再結成メンバーに初期の中心人物であるギタリストがいないことは少し寂しくもあるが、それでもSuedeの復帰は昨今のUK Rockシーンにおいても歓迎されるトピックとして異論はない。

しかし、私にとってのSuedeは、すでに賞味期限切れのバンドに等しい。
彼らの全盛期、それはつまり2nd「Dog Man Ster」(1994年発表)や3rd「Coming Up」(1996年発表)の時期を指すが、それ以降、どこかピントのズレたバンドの姿勢に共感を覚えることはほとんどなかった。

全盛期にあたる1997年の来日公演には私も足を運んだ記憶がある。
確か会場は、まだオープンして間もない赤坂ブリッツだったと思う。
前年にリリースされた「Coming Up」が予想以上に売れまくり、当時としては異例の3days公演が組まれていた。

今でも覚えている1曲目、VocalのBrett Andersonが颯爽とステージに登場し、「She」でLiveは幕を開けた。
続いて「Trash」。
この曲は当時、SonyのTVCM曲に使われていたこともあって、この時点でオーディエンスの盛り上がりも最高潮に達していたと思う。
その後「Lazy」や「By The Sea」など「Coming Up」からの曲が数多く披露されたものの、私がSuedeの作品で最も好きな2nd「Dog Man Ster」の収録曲はほとんど演奏されなかった覚えがある。
ただ、Live後半に「New Generation」がプレイされた時は我ながら狂喜してしまい、思わず最前列付近までもみくちゃになりながら拳を振り上げた思い出もある。

あの頃のSuedeは本当に美味だった。
UK出身らしい湿り気のあるメランコリックな曲調と、Brettの個性的な歌声が独特な世界観を形成していた。
当時はグランジが世界の潮流となっていたが、そこにあってSuedeは埋没することもなく、唯一無二の存在感でシーンを駆け抜けていった。

特に2nd「Dog Man Ster」は今でもヘビロテする機会の多い作品だ。
メランコリックとオルタナティブが高次元で融解したような、そしてどこかバイセクシャルな妖しい雰囲気を持ったUK Rock史に残る名盤である。
今では世界の頂点に立つColdplayも、この作品から何かしらの影響を受けたのではないかと思わせるほど、ロマンティックでドラマティックな作品だ。
彼らの中で最も売れたアルバムは3rdの「Coming Up」なのだが、Suede初心者にはいつもこの「Dog Man Ster」を推している。
もし、まだ未体験の方がいるならば、ぜひチェックしてみて欲しい。

さて、今般の再結成だが、新作の発表の噂が流れた時、一抹の不安がよぎったのは私だけではないだろう。
Brett本人でさえ再結成には否定的だったはずなのに、何の因果か新作までリリースするとはこちらも内心の驚きを隠せなかった。
何度も言うが、Suedeの賞味期限は確かに切れていたはずだ。
少なくとも、ソングライティングの要であるギタリストのBernard Butlerが、2ndリリース直前にバンドから脱退した時点で雲行きは怪しかった。
3rdの「Coming Up」はポジティブなポップソングの応酬でバカ売れしたが、そのせいで方向性にブレが生じ、その後のSuedeは見事に失速してしまったのだ。

私はSuedeほどワインの似合うロックはないと思っている。
ビールやテキーラが似合うロックは世界中にたくさんあるけれども、ワインが似合うロックなど、見渡す限り少数である。
先に述べたように、メランコリックとオルタナティブの音楽性に、耽美的で性的なスパイスをふりかけたのがSuedeの真の姿であり、果たしてそんな過去のピークを越えることが出来るのかという疑問があった。

つまり、彼らはまだワインに合う美味しいチーズとなり得るのか、ということ。
たとえ賞味期限が切れたチーズだとしても、熟成という意味ではかえって美味しくなることもあるかもしれない。
そんな不安と期待が交錯した状態で私は本作を手に取った。


ほろ苦い復帰作

実は本作を聴く前に、アルバムのオープニング曲である「Barriers」は事前にチェックしていた。
これはSuedeの公式webで配布していたものだが、実際のところ、この曲は本当に良かった。
露骨な「Coming Up」路線でありながら、陰影を残すようなメロディとシンプルなアレンジは初期のSuedeを容易に想起させるものだった。
これならアルバムも傑作になるに違いない。
そう思わせる説得力がこの曲にはあった。

しかし。
私にとってこの再結成アルバムは、一言で言えば退屈な作品だった。
「Barriers」の出来に気を良くして、期待に胸を膨らませ過ぎたのだろうか?
そう思い、冷静になったつもりで5回ほど全曲をリピートして聴き続けたのだが、感想は第一印象と大差なかった。

確かに中身はSuedeである。
メランコリックとオルタネティブの調和も、耽美的でセクシーな一面も、かつての彼らをイメージさせるのに十分なポテンシャルを秘めた作品だろうと思う。
だが、決定的に魅力のある曲が見当たらないのである。
例えば2ndの「Dog Man Ster」なら「New Generation」のような、3rdの「Coming Up」なら「Beautiful Ones」のような、アルバムをリードする楽曲が皆無なのだ。
強いて挙げるとすれば「Barriers」だと思うが、どれもシングルのB面に収録するような、確かにそれはそれで良い曲ではあるものの、全体的に地味な印象が拭えないのである。

もちろん、代表曲だからと言ってポップソングである必要もないし、こちらもそれを望んでいるわけではない。
Brettの歌声は衰えるどころか様々な表情を見せるようになったし、全体を包むサウンドプロダクションもそれほど悪くないと思う。
唯一、ソングライティング及びアレンジ能力の限界を露呈する結果となってしまっているのが、ファンとしては非常に悔しいのだ。
なぜかバラード調の楽曲が多いのも本作の特徴だが、過去に「The 2 Of Us」や「Still Life」のような名曲を生み出してきた彼らだけに、本作に収録されている楽曲の小粒感は否めない。

やはりBernardの存在はとても大きいものだったと改めて痛感した次第である。
彼のメロディセンスは元より抜群だが、何よりもアレンジ能力に長けていたことがSuedeの武器でもあった。
例えばそれは「New Generation」のサビにおいて、ソロギターのようなアルペジオでBrettのVocalを引き立たせるなど常人の発想を超えたところに彼の凄さがあったはずだ。

おおSuedeよ。
なぜ今回の再結成にBernardを迎えなかったのか。
せめてプロデューサーとしてでも、楽曲のアレンジに関わらせて欲しかったと思う。

おおBrettよ。
彼とは仲直りしたんじゃなかったのかい?

とはいえ、賞味期限切れのチーズそのものは腐ってはいなかったということ、これだけははっきりと申し上げておきたい。
足りなかったのは、それを上手く料理する凄腕シェフの存在だろう。
本作が退屈だったのも恐らくその辺に原因があるように思えてならない。

復帰作「Bloodsports」は確かにSuedeらしい作品に仕上がっている。
と同時に、全盛期を知るファンの1人として、ほろ苦い味のするチーズだった。
美味だが、この味は飽きやすい。





ブラッドスポーツ
スウェード
ブラッドスポーツ
曲名リスト
1. バリアーズ
2. スノーブラインド
3. イット・スターツ・アンド・エンズ・ウィズ・ユー
4. サボタージュ
5. フォー・ザ・ストレンジャーズ
6. ヒット・ミー
7. サムタイムズ・アイ・フィール・アイル・フロート・アウェイ
8. ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー?
9. オールウェイズ
10. フォルトライン
11. ドーン・コーラス (日本盤ボーナス・トラック)
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