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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

ルミネス エレクトロニック シンフォニー レビュー

はじめに

ルミネス エレクトロニック シンフォニーはQ ENTERTAINMENTが開発、UBI SOFTがパブリッシャーを務めた音楽系落ち物パズルゲーム。
現時点でのプラットフォームはPlayStation Vitaのみとなっており、日本国内では2012年4月19日に定価3,990円でリリースされた。

本シリーズはすでに次世代パズルゲームとして幅広い支持を得ており、特に海外での評価も高く、Q ENTERTAINMENTを代表するフランチャイズとしても有名である。
今回、PlayStation Vitaのタッチセンサーに特化した新規タイトルということで、発売後1年を経て、私もようやく落ち着いてプレイすることが出来たので簡単にレビューしておきたい。
ちなみに、過去にリリースされたルミネスは全作品をプレイ済みであり、私にとっては非常に思い入れのあるシリーズでもある。


いつものルミネス+α

ルミネスPSPから始まったタイトルである。
その登場は今思い出しても鮮烈なもので、テトリスぷよぷよといった過去の落ち物系パズルゲームを一気に旧世代へと追いやった新世紀的作品とも言えよう。
もちろん、サウンドとゲームプレイがリンクするゲームは当時としては珍しい発想というわけではなく、伝説と称されるRezの発売からすでに3年の月日が流れていた時期でもあった。
しかし、そのRezよりも格段に進化したゲームデザイン、特にパズルゲームとしての完成度の高さは今から考えてみても群を抜いていたと思う。
実際、要となるBGMにはMondo Grosso信近エリの楽曲提供もあり、この初代ルミネスPSP市場でも歓迎され、その後、続編となるルミネス2も早晩に陽の目を見ることとなった。

続編となったルミネス2は初代からのマイナーモデルチェンジ的な立ち位置でありながら、音楽とパズルゲームの親和性が頂点を極めた傑作となった。
特にこの作品から生まれた元気ロケッツの「Heavenly Star」などは、ゲーム派生の音楽としては広く一般大衆へ受け入れられた貴重な成功例とも言うべき事象であり、これはファンにとっても記憶に新しいところだろう。
当時はピアノを主体とした哀愁系Houseが日本の音楽シーンを席巻していた時期でもあり、これにより4つ打ちと称されるHouse系楽曲への抵抗感が大衆から取り除かれていたことも元気ロケッツにとっては幸運だったのかもしれない。
とはいえ、元気ロケッツ特有のエモーショナルで多幸感あふれるヴァイブスは、今の日本の音楽シーンを見渡しても唯一無二、貴重であると言わざるを得ない。
EDMというパーティー系エレクトロなジャンルが日本を侵食しつつある今だからこそ、元気ロケッツの活動再開への期待は膨らむ一方なのだが、果たして。

さて、そのルミネス2から5年を経てリリースされたのが今回の新作である。
まずはじめに、私の第一印象としては「いつものルミネス」がそこにあったということ、これを申し上げておきたい。
いわゆる操作性に直結する手触りの問題だが、ゲームの基本骨格はシリーズの良さをきちんと継承しているのだ。
裏を返せば、1作目から2作目、そして本作へと続くシリーズのブラッシュアップが明確に成功していることを意味している。

ちなみに、本作はルミネスシリーズにとって純粋な3作目、ということではない。
2作目以降、本作がリリースされるまでに、Xbox Live Arcade版やPSN版のダウンロード販売専用のルミネスがリリースされている。
しかし、PSP版で産声をあげたこのシリーズは、やはり携帯機というステージがふさわしく、且つ最良の場所であると私は考える。

例えばXbox Live Arcade版、いわゆるLUMINES LIVE!と呼ばれる作品は多様なスキンと初のオンライン対戦機能の実装などで目新しさのインパクトは十分にあったが、Xbox 360用コントローラーにおける操作性の問題(十字キー)等に終始悩まされることになり、パズルゲームとしての本領が素晴らしく発揮されたタイトルとは必ずしも言えなかった。
また、ルミネス スーパーノヴァとしてリリースされたPSN版にしても、こちらは肝心の楽曲の貧弱さが目立つ結果となっており、この選曲については後段でも詳しく解説するが、音と光の電飾パズルゲームらしからぬ品質となっていたことは残念極まりない。

そしてどちらもXbox 360PS3といった家庭用ゲーム据置機を舞台としているため、特に手軽さという点においては、当初から携帯ゲーム機に対して一歩及ばない状況というものが生まれていたのも事実だ。
確かに据置機のスペックから生み出される大画面による高画質で高音質なルミネスも1つの理想郷である。
しかし、パズルゲームという本来の生い立ちを考えた時、プレイヤーが求めているのは第一に手軽さであり、その次に高画質&高音質ではないかと思う。
だからこそ、今回のプラットフォームがPSPの後継機、PS Vitaであることは非常に大きな意味があると私は考えている。

今回、このVitaという高スペックな携帯機のおかげで、音はもちろん光の演出もこれまで以上に妖艶且つ美麗に仕上がっているのを確認することが出来た。
第一印象で言及したPSPに準拠した操作性も全く問題はなく、確かにVitaPSPよりも一回り大きいサイズとなるが、多くの方にとってはまずもって許容範囲であろうと思う。
私のような1作目からの熱心なファンからすると、このVitaルミネスの相性の良さを最初に実感することが出来たのは何よりも収穫だったと言える。
確かに中身は「いつものルミネス」だが、そこには「最新型」を実感させる手触りがあり、この一歩先行く未来感はシリーズ伝統とも言うべきものだろう。

最新型の象徴としては、新機能の存在もある。
Vitaには前面だけでなく背面にもタッチセンサーの存在があるのだが、これを使ってゲーム全体の難易度をプレイヤーに委ねるという、画期的なシステムを搭載しているのだ。
このシステム、すでに賛否両論あるのかもしれないが、この発想力には正直私も舌を巻いた。
確かにルミネスに慣れた旧来のファンにとっては無用の長物でしかないのかもしれない。
しかし、本作から初陣を飾るプレイヤーにとっては、きっとありがたく重宝することになるだろう。

簡単に説明をすると、プレイヤーが恩恵を受けることが出来るスキルの発動を、背面タッチセンサーの連打によってそのゲージをためていくというものだ。
これにより、パズルが積み上げられて窮地に陥った場面においても、このスキルの発動によって何とかその危機を脱出出来るように、上手くゲームバランスが調整されているのである。
ただ、その連打行為の見た目からするとプレイ中に中指や薬指を慌ただしくバタつかせるのはいささかスマートではなく、必然的にこれに頼ることのないルミネスへの慣れがプレイヤーへ課せられた目的の1つにも繋がっている。
要するに、この背面連打を使うも使わないのもプレイヤーの自由であって、それによって難易度が上下するという画期的なシステムなのだ。

この新システムの発想は本当に素晴らしいと思う。
例えばこのおかげでゲームスタート前の難易度設定が完全に不要なものとなっているのだ。
確かにルミネスに限れば、当初からそういった難易度設定というものは組み込まれておらず、周回プレイを重ねるごとに落下スピードが速くなっていくというパズルゲームの基本に忠実な設計だったことは今さら言うまでもない。
しかし、今回のルミネスが新たに提示したものは、難易度調整そのものを完全にプレイヤーの手に委ねるというこれまでのシステムをさらにアップデートさせたものだ。
まさにこれは「+α」と呼ぶにふさわしい発明ではないだろうか。

こうしたパズルゲームに限らず、他の多くのゲームではスタート前のオプション設定で事前に難易度を設定する、というのが常道である。
ルミネスならではの発想力によって、その常識を覆すインパクトを実装したのが本作であり、冒頭に述べた「いつものルミネス」に「+α」的な新風が吹き込まれたこと、これをまずは皆さんにご報告しておきたいと思う。


驚異的な選曲

ここに至って改めて説明するまでもないが、ルミネスは「音と光の電飾パズルゲーム」として登場した経緯がある。
繰り返すが、光と音の〜、ではない。
音と光の〜、つまり大前提としてまず音楽ありきのゲームである。
すでにグラフィックや新機能については前段で簡単に述べてきた通りだが、ここからは肝心の音楽について少し感想を残しておきたい。

まずは本作の収録曲一覧をご覧頂こう。
(リンク先は全てYou Tube


4 AM - Kaskade
Aganju - Bebel Gilberto
Always Loved A Film – Underworld
Apollo Throwdown – The Go! Team
Automatons – Anything Box
Autumn Love – SCSI-9
Bang Bang Bang – Mark Ronson & The Business Intl
Celebrate Our Love – Howard Jones
Close (To The Edit) – Art of Noise
Disco Infiltrator – LCD Soundsystem
Dissolve – The Chemical Brothers
Embracing The Future – B.T.
Flyin’ Hi – Faithless
Good Girl – Benny Benassi
Gouryella – Gouryella
Hey Boy Hey Girl – The Chemical Brothers
Higher State of Consciousness – Wink
In My Arms – Mylo
Kelly Watch The Stars – Air
Moistly – LFO
Never – Orbital
Out Of The Blue – System F
Pacific 707 – 808 State
Played-A-Live (The Bongo Song) – Safri Duo
Rocket (Tiësto Remix) – Goldfrapp
Sunriser (Publicmind Remix) – Ken Ishii
Superstar – Aeroplane
The Future of the Future (Stay Gold) – Deep Dish featuring Everything but the Girl
The Sun Rising – The Beloved
What’s Your Number – Ian Pooley
Windowlicker – Aphex Twin
Wolfgang’s 5th Symphony – Wolfgang Gartner
Wooden Toy – Amon Tobin
Yesterday When I Was Mad (Jam & Spoon Mix) – Pet Shop Boys


結論から言うと、今回のルミネスはシリーズ史上最高水準とも言える選曲である。
これほど多種多様なジャンルから選び抜かれたラインナップは、他の作品とは確実に一線を画す。
そもそも、これまでのルミネス作品の音楽は、開発陣によるオリジナル楽曲が中心だった。
しかし、本作は全ての楽曲が実在のアーティストによる有名曲のオンパレードであり、これはルミネスが到達した1つの頂点でもある。

推測に過ぎないが、シリーズ開発当初というのは、まずパズルゲームという基本骨格を構築することが前提にあったんだろうと思う。
その後、音楽をプレイに連動させていく作業、つまり後付けとしてBGMを貼り付けていくというもの。
過去のルミネスがどうしても開発者オリジナルの楽曲に傾倒しているのは、裏を返せば既存の楽曲をこの世界に放り込むことがいかに難しいかという証左とも言えよう。
今回、こうしたオリジナル楽曲をあえて排除することで、Q ENTERTAINMENTというデベロッパーのポテンシャルを最大限にアピールすることになった。

要するに巷でヒットした既存の楽曲をオーバーホールの如く分解し、プレイヤーの操作にきちんとリンクするように再構築したのが本作なのだ。
DJの世界で喩えるならRemixという作業を、パズルゲームというフィルターを通して見事に成し遂げている。
しかも原曲の雰囲気を損なうことなく、プレイヤーに対して一定のカタルシスを与えなければいけないという命題を抱えながらの開発である。
思わず現場の苦労がこちらまで伝わってきそうな気配だが、結果として本作はシリーズ史上、最高品質の音楽で彩られることとなった。

これほど多種多様な楽曲をコンパイルしながら、そのゲームプレイにおいて著しく雰囲気を損なう場面など皆無に等しく、また、ルミネス独特な世界観も一切破綻することがないという、まさに開発陣のたゆまぬ努力の結晶体、それがこのルミネス エレクトロニック シンフォニーの真の姿である。
そしてこの輝かしい結晶体は次期ルミネスの未来を強烈に暗示するものとなった。
それはかつてない希望に満ちあふれた明るい未来である。


ルミネスの未来

ルミネスの未来。
この話をする前に、ビブリボンとDEPTHという古いゲームの話をしよう。
まずビブリボンは1999年にプレイステーション用ソフトとしてリリースされたリズムアクションゲームだ。
いわば音ゲーの亜種に近いが、この作品は当時としては画期的なシステムを導入していたことから、脳内の片隅にその記憶が残っている方も少なくないだろう。

それは、手持ちの音楽CDによってゲーム内のデザインを変えるという珍妙奇天烈なものだった。
手順としては、最初にゲームディスクを起動し、その後に好きな音楽CDを読み込ませるだけというもの。
至極簡単な作業なのだが、これによって与えられたプレイヤーの自由度というのは今から考えても特筆すべきものだった。
何よりも自分の好きな音楽をゲームとして遊べるということ、これに尽きる。
ゲーム本来の出来はともかくとして、本当の意味での自由度がそこに存在していたのではないかと今でも私は思う。

これを手掛けた七音社というデベロッパーは、パラッパラッパーやウンジャマラミーなどゲーム史に残る音ゲーを数多く輩出してきたことでも知られるが、このビブリボンが後世、つまりルミネスに与えた影響は決して無視することが出来ない。
オリジナル楽曲をあえて封印し、既存の有名曲をシンクロさせた今回のルミネスにとって、このビブリボンのシステムは果たして未来への啓示となっていたように思えてならないのだ。

それからDEPTHについて。
こちらも古い作品であり、プレイステーション用ソフトとしてソニーが開発を手掛けた音ゲーに属する作品だが、プレイヤーは海中のイルカを操作し、オブジェクトを発見するたびに音色を入手、それをシーケンサーの要領で音楽そのものを自作するという一風変わったものだった。

ゲーム性としては作業を感じやすい上に、操作性もすこぶる良好とは言えないものだったが、プレイヤーの自由度という点からすると、気軽に音楽を制作出来るという音好きを刺激する楽しさがそこにあった。
これは単純に海中探索をするアクアノートの休日などとは似て非なるものである。
いわば音楽制作というクリエイティブな要素をプレイヤーに与えた好例として、今でもこの作品の評価は低くないはずだ。

ルミネスの未来。
それはプレイヤーが好きな音楽を手軽にBGMにすることが出来るというビブリボン的世界。
そしてプレイヤーが自ら音楽を制作していくというDEPTH的世界。
この2つの未来を暗示しているのが本作である。

ビブリボン的世界。
例えばそれはゲーム内からiTunesのサイトにアクセスし、そこで購入した楽曲をルミネスの世界にシンクロさせるというもの。
加えてVitaに保存したmp3等の音源データを読み込んで同じくゲームプレイに反映させるというもの。
私の場合で言えば、自作したDJ Mixを読み込んでそれをバックにルミネスをプレイするという姿が思い浮かぶ。

DEPTH的世界。
例えばそれは無音の状態からゲームがスタートし、進行状況によって音色を入手、それを使って楽曲を自ら構築するというもの。
すでにこれはXbox Live Arcadeで販売されているChimeという作品でもその雰囲気を味わうことが可能だが、それをさらに推し進めた、ルミネスだからこそ到達可能な未来の姿が必ずや存在するはずだ。

言い換えれば、この2つの未来はルミネスの開発陣に待ち受けている試練とも言えるだろう。
だが、本作の高い完成度を目の当たりにした時、私はこの未来は達成不可能ではないと確信した。
すでにルミネスのロードマップに組み込まれている案件かもしれないが、ぜひQ ENTERTAINMENTにはこの未来にトライして欲しいと思う。

「音と光の電飾パズルゲーム」として登場したルミネスは、ここに来てようやく最終形態へと進化しようとしている。
本作、ルミネス エレクトロニック シンフォニーはその過渡期において、上記未来へのキーワードが随所にちりばめられた歴史的にも重要な作品であり、ファンならずとも無視することの出来ないゲームなのだ。


おわりに

すでに述べてきたように、「いつものルミネス」に+αの新機能と素晴らしい選曲を内包しているのが本作であり、結論として旧来のファンのみならず、この作品からルミネスの世界に初めてダイブする方にとっても、全般的に手触りの良い、そして心地良い作品となっている。
その理由は改めて申し上げる必要もないが、簡易的な難易度の調整とバラエティ豊かなBGMの存在が大きい。
やはり知っている曲が流れればプレイヤーのテンションも上がるだろうし、Vitaらしい美麗なグラフィックのおかげでモチベーションの向上も特筆すべきものがある。

そして最も大切なことはパズルゲームとして本来の面白さが保証されていること。
シリーズ伝統の良好な操作性はもちろん、広範囲にブロックを消滅させた時のカタルシスなどは本作でも健在であり、この暗雲ひしめくストレス社会の日本において、こんなに手軽なストレス解消ツールほど重宝されるものはない。
気付けば30分、いや1時間経っていたことなど、ルミネスにとっては日常茶飯事なのである。

しかし、メニュー周辺やスキル関係、プレイリストなど改善して欲しい部分も多々見受けられたのも事実だ。
若干ではあるが、ローディングの長さも気になった。
ただ、そうした細かい不満点を軽く吹き飛ばすかのような本作の完成度の高さ、これははきちんと評価されて然るべきだろう。

これを機会にPS Vitaを購入するという選択も私なら否定しない。
なぜなら、本当の意味でのシンフォニーをこの作品で体験することが出来るのだから。

恐るべし、Q ENTERTAINMENT、である!



総合評価:93点




ルミネス エレクトロニック シンフォニー