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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

4armというメルボルンの奇跡

CD Review

Submission For Liberty

4arm「Submission for Liberty」★★★★★


次世代スラッシュメタルの旗手

前回の記事でオーストラリア産のGypsy & The Catを取り上げてみたのだが、同じメルボルン出身で忘れてはならないバンドがいる。
その名も4arm。
生粋のHR/HM好きの読者ならすでにご存知の方も多いだろう。
メタルコア全盛のHR/HMシーンにおいて、限りなく豪快な正統派スラッシュメタルを奏でる4人組だ。

しかしその結成は2004年と比較的若いバンドに属しており、日本での知名度も今ひとつ伸び悩んでいるのが現状である。
これはレコード会社のプロモーション不足というよりも、そもそも日本のレーベルと契約を結んでいないために、未だ日本盤がリリースされていないということが大きな原因だろう。
世界広しと言えども、これほど良質なメタルバンドにはなかなか出会えないのが現実であり、これは私の勝手な要望だが、レコード会社のA&Rマンは今すぐにでもオーストラリアへ行って契約に動いて欲しいと思う。
もしかするとすでにそうした動きはあるものの、交渉が難航して契約に至っていないということも十分考えられるが、兎に角、このバンドの良さはもっと広めなければならないと感じている。

そこで今回紹介するのは彼らにとって現時点での最新作「Submission for Liberty」(2012年発表)である。
1stアルバムは2005年、2ndアルバムは2010年にリリース済みであり、本作は満を持しての渾身の3rdアルバムとなる。
バンドとしての基本的な路線はデビュー当時からほぼ変わっておらず、一言で言えばモダン系正統派スラッシュメタルと呼ばれるものだ。

このスラッシュメタルというものは80年代にMetallicaMegadethAnthrax、Slayerのいわゆるスラッシュ四天王によってHR/HMシーンの中で栄華を極めたジャンルである。
これは主にアメリカ西海岸のベイエリア地方を発祥とする流れと、ジャーマンスラッシュ三羽ガラスと呼ばれたKreator、Sodom、Destructionを筆頭とするヨーロッパでの盛り上がりとが相乗効果となって、怒濤の如くHR/HMシーンを席巻するに至ったことは今更ここで詳しく説明する必要もないだろう。

これが90年代に入ると他のジャンルと同様に細分化の道を突き進み、ある者はデスメタルグラインドコアへと傾倒し、ある者はグランジオルタナティブといった新たな潮流を取り入れ、そしてある者はポップで大衆受けする路線へ舵を切るなど、シーンそのものは混沌を深めていくことになる。
しかしそれはデスラッシュメロデス、そしてメタルコアなど新たなジャンルを産み出す原動力ともなり、暗黒の時代と呼ばれる2000年代初頭にあってもスラッシュメタルの息づかいは微かに聞こえていた。

そして時代は繰り返す。
2000年代以降、80年代のスラッシュメタルをお手本とする若手バンドが雨後の筍のように出現し始めたのだ。
これは細分化され尽くしたHR/HMシーンにおけるスラッシュメタルリバイバルブームとも関連付けられるが、今回紹介する4armはもちろん、WarbringerやGama Bomb、Evileなど、彼らは皆若手でありながら、80年代に絶大な支持を得たオーセンティックなスラッシュメタルをお手本とし、尚かつそこに現代的なセンスをちりばめて他との差別化をはかるという、ある意味でインテリジェンスな戦略の下で曲作りを行っていることは驚愕に値する。

当時のスラッシュ四天王たちもこの流れに沿うかのように、それぞれが一斉に80年代風のスラッシュメタル系アルバムをリリースするという、古参ファンにとっては狂喜とも呼べる現象が起こったのも記憶に新しいところだ。
ただ、それら全てが十分満足出来るクオリティだったかどうかについては疑問の余地があり、特にMetallicaの「Death Magnetic」やMegadethの「Th1rt3en」については当時の全盛期を知る人間にとって、それはそれは物足りないアルバムとなっていたのも事実だ。
もちろん、TestamentやKreator、Sodomなどは当時と変わらぬ破壊力とスピード感を兼ね備えた作品を今でもリリースしているのだが、これはバンドの方向性が80年代からあまりブレていないということも考えられるだろう。

ベテラン勢の動向には今も注目しているのだが、ここで若手に話を戻そう。
4armの音楽性は先述したように、正統派、つまり80年代〜90年代に頂点を極めたスラッシュメタルがベースとなっている。
そこに現代的なリフのセンスがちりばめられており、曲調としてはベイエリアでもなく、ジャーマンでもない、独特な質感を漂わせる内容となっている。
この辺はシングル曲「Raise A Fist」を聴けば一目瞭然なのだが、例えばイントロはTestament系のクランチが効いたリフでオールドスタイルなベイエリアスラッシュかと思わせるのだが、中盤のギターソロの組み立ては後期Anthrax、いわゆるジョン・ブッシュ在籍時を彷彿とさせるもので、こうしたオルタナティブ系のアレンジは80年代には存在しなかったものである。
また、タイトル曲でもある「Submission For Liberty」については、AnnihilatorとTestamentを足して2で割ったところにMetalica初期の疾走感をスパイスしたかのような、良い意味で過去の偉大なバンドにあった美点を取り入れており、これには私も思わず笑みがこぼれてしまったぐらいだ。

本作は収録曲全てが高品質であるものの、欲を言えばコード進行にマンネリが感じられる部分もあり、ここは若さゆえなのか、熟成が待たれる部分でもある。
また、Vocalの声質もMetallica的で耳障りではないのだが、Testamentのチャックビリー的な鬼気迫る咆哮のようなシャウトがもっとあっても良かった。
余談になるが、私の好きなデスラッシュ系バンドでRevocationという若手がいるのだが、あれぐらい暴発気味でも全然大丈夫かな、とは思う。
とはいえ、各曲の疾走感、そして構成については文句なしといったところなので、後はこのジャンル特有の凶暴性、暴虐性をいかに昇華させていくのか、そこが気になるところでもある。

例えばSlipknotに代表される近年のラウド&ヘヴィなメタルに洗礼を受けたヘッドバンガーズにとっては、4armに若干の物足りなさを感じてしまうかもしれない。
しかし、80年代〜90年代当時を体験した人間にとって、この音楽性は垂涎ものである。
硬質なギターリフがザクザクと刻み込まれる心地良い疾走感とほどよい攻撃性が同居した彼らの楽曲は、懐かしさとともに新鮮な驚きを伴って古参リスナーを自然に破顔させることだろう。

今更言うまでもないが、スラッシュメタルはアメリカだけのものじゃない。
もちろん、ドイツをはじめとするヨーロッパの専売特許というわけでもない。
カナダにはAnnihilatorが、ブラジルにはSepulturaがいるように、オーストラリアと言えば4armと呼ばれる日もそう遠くないはずだ。
次世代スラッシュメタルの旗手として、今後の活躍に期待したいと思う。





Submission For Liberty
4ARM
Submission For Liberty
曲名リスト
1. Sinn Mact Frei
2. While I Lie Awake
3. Raise A Fist
4. Submission For Liberty
5. The Oppressed
6. I Will Not Bow
7. Taken Down
8. My Fathers Eyes
9. The Warning
10. Blood Of Martyrs

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