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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

EDMが日本で流行らない3つの理由

Report

1. 派手すぎる

まずは上の動画をご覧頂きたい。
カナダ出身のAutoerotiqueによる新曲「Asphyxiation」のPVである。
曲調からも分かるように、最新のEDM系楽曲ということで異論はないが、冒頭から迸る清々しいほどのエロさはこのジャンル特有のものだ。
およそ真っ当な日本人の感覚では到底作れないほどの見事なバカバカしさ&エロセンスである。
しかもそれが下品にいやらしいわけでもなく、あくまでも明るいスケベ=むっつりの真逆として世界観が成立しているところに、確信犯的な思惑を強く感じるのだが、私はこの底抜けに明るいバカっぽさが今のEDMを象徴しているように思う。

核心に迫る前に、現代EDMがClub発祥のジャンルであること、これは以前にもCTSの記事で言及したばかりだが、つまりそれは非日常感=パーティースタイルを背景としていることが前提としてまずある。
これが今のダンス規制大国ニッポンにとっては最大の不幸とさえ言える部分なのだが、それは次章で詳しく述べることとして、楽曲そのものについて解析してみたい。
まずここ数年で隆盛した海外製EDM系楽曲の特徴として、Electro Houseの亜種ということが言えるだろう。
もっと噛み砕いて言うならば、そのメロディや音色、アレンジ、そして全体の世界観など、およそ美意識というものをごっそりと削ぎ落とし、代わりにパーティースタイル特有のポジティブアッパー感をミラーボールほどのまばゆい輝きとともに表現したのが今のEDMだ。
それは例えばElectro特有のブリブリ系シンセを序盤から打ち鳴らし、唐突に訪れるブレイクとそこから展開する長いドラムロールでフロアを煽るだけ煽り、そこから大サビへと突入していく姿、これが近年の海外製EDMの本質である。

もちろん、Electro Houseに限らず、今日ではProgressive HouseやTrance、そしてDub Stepなど様々なジャンルからアイデアを取り込み、それこそ毎日のように新曲がリリースされているのが現状だ。
細かいジャンルは違えども、共通するキーワードは踊れること、これに尽きる。
そもそもClubパーティーを盛り上げるための楽曲なのだから、喜怒哀楽の最初と最後の感情さえあれば誰にも文句は言われないジャンルである。
私などは哀愁帯びた美旋律や耳障りの良い音色でないと心も身体も躍らないが、そんなものは自分の部屋に置いて来いと言わんばかりの勢いだ。

こうしたEDMが特に北米で火が点いたのも、アメリカの国民性を考えれば十分納得出来るところだが、面白いのはフェス大国ヨーロッパでも大きな盛り上がりを見せていることだ。
恐らくこれは長年に渡って人気を維持してきたEuphoric TranceやProgressive Houseへのカウンターカルチャー的な動きではないかと私は考えているのだが、果たしてこれが模範解答なのか、もう少し時間が経たなければ判断することは出来ない。
もしかするとオランダやイタリアの一部で局地的に盛り上がっていたHard Danceの流れや、それまであったDance Valleyなどのフェス文化がここに来て大きく開花したという可能性も十分に考えられるはずだからだ。

では日本はどうかと言うと、近年のHouseの全国的流行は一定の評価に値すると思う。
これはPCDJの発達により、歌手やモデルといったファッションリーダー達がClub DJへと転身しやすくなったのも遠因の1つと私は考える。
例えばHouse Nationなどのイベントを中心に、彼女(彼ら)たちは率先してHouseミュージックをフロアに投下し、4つ打ちで踊るという概念を比較的若いオーディエンスにレクチャーしていったことは功績の1つとして挙げられるだろう。
また、ある者は自身の楽曲をHouse系にアレンジし、それをJ-Pop市場に送り込むなど、広く一般大衆にも4つ打ちと呼ばれるリズム感を浸透させ、長らくHip Hopの天下だった日本のチャートもなかなか面白い状況に変わってきているように思う。
となれば、この4つ打ちを基本骨格とするEDMにとって、今まさに、これほどのチャンスはないだろう。
絶好の好機到来である。
しかしながら、2013年の今になっても、海外発のEDMは日本では苦戦しているのが現状だ。

良くも悪くも、曲が派手すぎるのだ。
いや、底抜けに明るいバカバカしさはある意味で爽快感があり、そこに漂うポジティブ感をこの期に及んで吊るし上げて否定するつもりはない。
しかし、楽曲それ自体があまりにもパーティーを意識して作られているため、シラフではピンと来ないのも事実だ。
要するに夜のClubで、大人数がひしめくフロアで、例えばお酒なんかをガンガン飲みながら踊り狂いたい人種向けというイメージが先行してしまっているのだ。
これはEDMの生い立ちを考えれば至極当然とも言える結果ではあるが、こうしたホームリスニング、又はカーリスニングに適さない音楽の場合、広く一般大衆に普及するのは相当な時間と労力がかかる。

今でも日本のレコード会社の一部はこのジャンルを流行らせようと躍起だが、こうしたアッパー系の楽曲がリリースされ続ける限り、いくらマーケティングしたところで無駄な努力だと思う。
例えばEurobeatはパラパラという社会現象を付随させて一般大衆へと拡散した。
その後に出てきた哀愁系及びオシャレ系Houseなるものはモデルやファッションなどサブカルチャーを上手く巻き込んで成功を収めた経緯がある。
ではEDMは何を武器とし、防具とするのか。
この点においてあまりにも無防備、つまり手ぶらではないか。
それなら音だけで勝負すると言っても、その曲調からして一般の人が常用して聴くとは思えない内容だ。
Eurobeatや歌モノHouseはシラフでも楽しめるが、エレクトロブリブリで終始テンションMAXなEDMはどうだろうか。

特に日本では本流となるClub文化が未だ根付いていないために、ヨーロッパのようなカウンターカルチャー的な動きも鈍い。
ただ派手なだけで美しさをあまり感じられない今のEDM楽曲は、どのジャンルにおいても美的世界観を欲する日本人にとって、苦戦は必至だろう。
海外のように4つ打ちメインのBig PartyやFestivalが定期的に開催されているわけでもなく、もはや流行の着火点すら見出せなていないのが日本の現状だ。

冒頭で紹介したPVは映像と音楽が綺麗にリンクし、作品としての全体的な完成度も高いが、果たしてこの曲がリスナーの耳にいつまで残るだろうか。
私などはどうにも心揺さぶられない曲と言うべきなのか、確かに映像の手法、見せ方は男性目線で好みだが、どうにもわざとインテリジェンスの対極を目指しているような気がして、若干軽薄に聴こえすぎるところが鼻につく。
もう少し抑揚のあるアレンジや美意識を感じさせる旋律でもあればこちらの印象も変わってくると思うのだが、果たして皆さんはどう聴こえただろうか。


2. 楽しむ場所がない

さて、今の日本では全国各地のClubが風営法で規制され、純粋なパーティーミュージックを気軽に楽しめる場所が決定的に少ないという事実がある。
すでに述べてきたように、フェスやクラブでのパーティーを意識して既存のHouseミュージックをアッパー系にアレンジしたのがEDMであり、これをホームリスニングするという行為はBBQを自分の家の食卓でやるようなもの。
どう考えても大人数で爆音の中、ワーキャー叫びながら歌って踊ってピースフルに騒ぐ類いの音楽である。
Drum'n'BassやBreakbeats、Dub Stepなどは踊らなくても何となくこちらの情感に訴えかけるものがあり、曲によっては大変に居心地良いものだが、EDMはその派手すぎる音楽性のため、Club以外ではとにかくリスニングが厳しい。

例えば同じHouseでもDeep HouseやTech Houseなどは、美容室のBGMにもなるぐらいにその生活環境に馴染みやすいものだが、EDMの騒がしさはある意味でEurobeatの思考に近い。
語弊のある言い方で申し訳ないが、要するにEurobeatはパラパラを踊ってナンボのジャンルであり、まさにEDMも踊ってナンボであるということ。
そう考えた時、今の日本でどれだけの受け皿があるというのだろうか。
確かに東京、名古屋、札幌、大阪あたりの都市圏におけるClub文化の隆盛は今に始まったことではない。
しかし、各地方都市に目を向けた時、その文化はまだまだ発展途上の段階にあり、この状況でEDMのようなパーティー系Houseがブームとなるのはとてもじゃないが考えにくい。
最近になって、EDMが日本で全く流行らないことに悲観し、この国はまだまだ遅れているとの発言をするアーティストも見かけるが、そう言いたい気持ちもよく分かる。
ただ、遅れているというより、まだ始まっていない、というのが真実だろう。

これは風営法による規制論議にもリンクする話だが、私が思うに、法律を変えるというスタンスではなく、法律を作るという方向性の方が未来を向いているような気がしてならない。
例えば各地方都市に行政特区を設けて、そこにClub産業ほか風俗業を集中させるとか、週末の1日のみ朝までの営業を特例として認める条例を作るとか、やり方はそれこそ様々あるように思う。
この狭い日本の土地柄を考えた時、Clubに隣接する住宅地などに騒音や治安の迷惑をかけてしまうのは当然考えられる事案である。
そうしたものを一括して法規制したのが風営法ということであるならば、単純に改正(規制緩和)することによって騒音や治安の不安を増大させてしまうのはさすがに好ましくないと思う。
要するにどちらの言い分を取るかではなく、Win-Winの関係のように、必ずどこかに妥協点や突破口があるはずだ。
私の平凡な頭脳ではその妙案がなかなか思い浮かばないが、この問題は日本の音楽文化にとっても決して無視することの出来ないものであり、1日でも早く何らかの出口、活路が見出されればと願っている。

食材もキャンプ道具も一通り揃えたのに、BBQする場所がないなんてこんなに悲劇的な話があるだろうか?
それが都市圏の一部のClubイベントでしか楽しめないものであるなら、過去のEuro BeatやHouse、はたまたEpic Tranceのように、全国規模でClub Musicが認知される日など、遥か遠い未来の話になってしまうのである。


3. シーンを引っ張るDJがいない

最後に、もう1つ悲劇的な話をしよう。
今の日本において、EDMシーンを引っ張る存在がいないという事実である。
これは日本のDJの怠慢ではないかと思うほどだが、かつてのClub DJとはいち早く新曲をフロアに提供する存在だった。
しかしインターネットにおける楽曲販売が定着した今、曲の鮮度は世界のどの地域に住んでいても大差はなく、要はそれをどう料理するかという味付けが重要視されるようになってきた。
皮肉にもPCDJの発達はMix技術の均一化という事態を招き、今では誰でも気軽にDJを楽しめる時代となったが、味付け、いわゆる選曲や構成がDJのアピールポイントとして台頭するようになってきた。

改めて整理するが、海外製EDMシーンを牽引しているのはDavid GuettaやTiestoなど、元々HouseやTranceのシーンで活躍していたDJ達である。
彼らはよりパーティーを盛り上げていくため、いやむしろオーディエンスの期待に応えるためなのか、Electro HouseやDub Stepといった真新しいジャンルに注目し、それを自身のスタイルに投影させて今のEDMという流れを作っていった。
そこには受け身の姿勢はなく、楽曲のクオリティはまた別の話として、作曲者として攻めの姿勢を崩さなかったことに成功の一因がある。

日本にも大沢伸一氏や田中知之氏、野崎良太氏などのHouse勢、石野卓球氏やケンイシイ氏を代表とするTechno勢などクリエイティブに活動するDJはたくさんいる。
しかしながらEDMに関しては未だシーンの第一線に日本のDJが登場していないという現状がある。
これは大変に由々しき問題ではないだろうか。
ハーメルンのように、笛を吹く人間がいなければそれに付いて行く者は一向に現れないのだ。
卵が先か、鶏が先かという議論で言えば、Clubシーンでは間違いなく鶏が先だ。
(いや、このメタファーは少し使い方を間違っている気がするが、ニュアンスが伝われれば良しとする。)
これはどの音楽ジャンルにも言えることだと思うが、特にClub Music界においてはシーンのパイオニア的存在、つまりDJがいてこそ発展していくものである。

EDMがいまいちこの日本で盛り上がっていないのは、そんなパイオニア不在によるところが大きいのかもしれない。
だからこそ若手DJ達の奮起には大きな期待を寄せているのだが、果たして。


おわりに

多少大袈裟に、基本は面白可笑しくEDMの諸問題について簡単に持論を述べてみたのだが、最後に私の本音を打ち明けよう。
私が感じるに、すでにEDMは末期状態である。
これは毎日のようにリリースされる楽曲を頻繁にチェックしているからこそ感じる部分だが、特に昨年後半から現在にかけて、もはやネタ切れではないかと錯覚するほど、似たような楽曲ばかりが巷にあふれ、DJとしてもリスナーとしても非常に退屈だ。
毎回同じような音色やアレンジによって、新鮮な驚きを感じる場面も極端に少なくなってしまった。

確かにClub業界は1つの曲がバカ売れすると全員が右にならえで似たような曲が湯水のように湧いてくる。
近年の4つ打ち関連で言えばDeadmau5やDinkaが象徴的だろう。
これは良い意味で流行を最も気にするジャンルだからこその功罪とも言うべき部分だが、EDMも例外ではなく、そろそろ方向転換が必要な時期にさしかかってきた。

推測にすぎないが、恐らく今現在のEDMと今年の年末に聴くEDMは少し毛色が異なっているように思う。
むしろそうでなければシーンは衰退する一方だ。
これは今のEDMシーンを牽引しているアーティスト自身が一番よく理解しているところだと思うが、私としてはこのネクストの動きに注目したい。
また、日本国内の動きにもEDMを起点としたClub Musicシーンのさらなる発展に期待したいところだ。
もはや世界の真似をしてもそれが日本で流行るとは限らないわけで、これはアメリカの価値観が全てではないという1つの証左でもある。

Electronic Dance Music、いやJapanese Dance Music、略してJDMとして、日本のClubカルチャーの真価が問われる1年にもなって欲しい。
今後とも引き続き、このジャンルには注目していきたい。



関連記事:EDMを誉めるなら夕暮れを待て (2014.4.15.)



Electronic Disney Music
V.A.
Electronic Disney Music
曲名リスト
1. A Whole New World feat. Matt Cab [Aladdin]
2. Main Street Electrical Parade [Disneyland(R)]
3. Beauty and the Beast [Beauty and the Beast]
4. Can’t Help Falling In Love [Lilo & Stitch]
5. Hawaiian Roller Coaster Ride [Lilo & Stitch]
6. Under The Sea [The Little Mermaid]
7. When You Wish Upon A Star [Pinocchio]
8. Part Of Your World (Remo-con Remix) [The Little Mermaid]
9. Mickey Mouse Club March [The Mickey Mouse Club]
10. Derezzed [Tron:Legacy]
11. Rezolution [Tron Uprising]
12. Unstoppable (Dave Aude Radio Mix) ?[Ant Farm]
13. Partysaurus Overflow [Partysaurus Rex]
14. Hey Pluto! (StoneBridge Remix)
15. He’s A Pirate (Radio Edit) (曲順未定 他 収録曲数未定)

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