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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

Capital Cities、それは限りなく透明に近いレトロモダン

CD Review

In a Tidal Wave of Mystery

Capital Cities「In A Tidal Wave Of Mystery」★★★★☆


Nu Discoの大型新人

21世紀はノスタルジックの時代ではないだろうか。
特に音楽に関してはどのジャンルにおいても懐古感や郷愁感が1つのキーワードになっているように思う。
RockやHeavy Metalの世界では70年代のプログレや80年代のLAメタルを模倣するバンドが数多く出現し、Club Musicにおいても80年代のDiscoムーブメントにインスパイアされたNu Discoなるジャンルが人気を博すなど、ある種良い意味でノスタルジーに捕われたニューシネマパラダイス的思想に基づいた楽曲が日増しに多くなっている印象を受ける。
ちなみにこのNu Discoというジャンルは、恐らくSwedish Popあたりが着火点だと思われるが、若い新進気鋭のアーティストが同時多発的に世界各地から登場しており、今最も注目に値するジャンルではないかと思う。
今夜はそんなNu Disco界隈から期待の新人を紹介したい。

アメリカ出身の2人組、Capital Citiesは今月にめでたく1stアルバム「In A Tidal Wave Of Mystery」をリリース。
先行シングルの「Safe and Sound」のPVがYou Tubeなどでも話題になっていたので、すでにご存知の方もいるかもしれない。
本記事にも掲載しているが、そちらのPVを見て頂ければ彼らのスタイルが一発で理解出来ると思う。
そこには現在のアメリカを席巻しているEDMのような騒がしいParty House系の雰囲気は一切なく、ただただ、限りなく透明に美しいレトロモダンな佇まいがそこにあった。

現状、Nu DiscoというジャンルはInfusionやCinnamon Chasers、Diamond CutやFear of Tigers、Russ ChimesなどのClub Music畑のアーティストと、Cut CopyやTesla Boy、Robyn、Two Door Cinema Clubなどのいわゆるバンド畑のアーティストが、両者ともに共存しながらシーンを形成してきた経緯がある。
私の場合、Nu Discoそのものを広義に捉えているのでこのような表現になってしまうが、クラブサウンドであれ、バンドサウンドであれ、共通しているのは80年代への熱烈なオマージュにあると思う。
このとき、明らかに80年代という時代そのものを再現しようとするアーティストも見受けられるのだが、厳密に言えばそれはDiscoであってNu Dsicoではない。
微妙な違いではあるが、Nu Discoとはあくまでも80年代に花咲いたDiscoムーブメントを母体としながらも、それを当時よりも進化した現代の音楽機材によって、尚かつモダンなアレンジを施した楽曲群の総称である、と私は定義している。
確かにNu Discoの生い立ちには諸説あり、正直言ってこれは完全に私見であることを改めて申し上げておきたいところだが、誤解を恐れずに言えば、イタロディスコの現代版、それがこのNu Discoの正体とも言えるだろう。

前置きが長くなってしまったが、Capital Citiesは2人組ということで、分かりやすく言えばオーストラリアのPnauのような、いわゆるエレクトロ・ポップ・デュオに属するユニットである。
今回の1stアルバムは予約購入するほど私も注目していたのだが、結論から言ってその中身は十分に満足出来るものだった。
いつものように1曲ずつ感想を残しておきたい。

01「Safe and Sound」:オープニングを飾るのは先行シングルにもなった彼らにとっての代名詞的存在の1曲。PVをご覧の通り、モダンとレトロが交錯する内容はそのままCapital Citiesの音楽性にフィードバックしていくものだ。サビのように印象的なホーンセクションが見事な爽快感を生んでいるが、それに負けない歌の存在も見逃せない。

02「Patience Gets Us Nowhere Fast」:疾走感を保ちながら、1曲目とはガラリと雰囲気を変えてきた2曲目。中盤のCメロの構成が素晴らしく、これによりフックの効いた楽曲になっている。哀愁系Nu Disco。

03「Kangaroo Court」:Daft Punk的なイントロから始まる緩いエレクトロなポップソング。イタロディスコを彷彿とさせるノリは心地良い懐古感すら漂う。

04「I Sold My Bed, But Not My Stereo」:BPMは125前後だろうか、Disco House的なイントロで始まるCapital Cities流のNu Disco。これも中盤からのアレンジが好印象。

05「Center Stage」:アルペジオ的なギターリフが印象的なミディアムテンポの1曲。Capital CitiesのFunkな側面が見え隠れする楽曲でもある。

06「Farrah Fawcett Hair」:女性Voの使い方など、モダンなEDM的アレンジを施しながらも、ホーンセクションなどで独特なノスタルジーを再現するあたり、まさにCapital Citiesの世界観がこの曲にも集約しているように思う。

07「Chartreuse」:こちらもミディアムテンポにしっとり聴かせるエレクトロポップ。R&Bを聴く感覚で2人の歌唱力を堪能出来る。

08「Origami」:まさかの日本語タイトルでこちらの期待値も上昇してしまうが、予想以上に良質な1曲に仕上がっている。どことなく歌謡的な雰囲気が漂うのもGood。2ndシングルに推したい。

09「Lazy Lies」:ビートレスなバラード。前半ですでに聴いたかのような旋律の使い回しが少々残念。

10「Tell Me How To Live」:こちらもパンチ弱めの楽曲。シタールのような弦楽器の使い方は良かったものの、どうにもサビが弱い。

11「Chasing You」:ポップでファンタジーでカラフルなエレクトロ。女性Voの配置も上手い。

12「Love Away」:本作の最後を飾るのは8bit的なシンセの旋律が印象的なバラード。途中から挟み込まれるファズの効いたギターソロが味わい深い。

以上、全体的にはよくまとまっている印象を受けたのだが、裏を返せば少々のパンチ不足は否めないかもしれない。
1stアルバムだからこそ、枠に収まりきれない躍動感など、それこそ新人らしい荒削り感がもっとあっても良かったように思うが、ソツなくまとめた印象だ。
従って、良く言えば優等生的なアルバムだが、悪く言えば少々退屈でファジーな空気が漂っているのも悲しい現実。
これはやはり1曲目の「Safe and Sound」の出来がずば抜けて良かっただけに、他の楽曲が相対的に地味に聴こえてしまったことが原因だろう。

ただ、このアルバムによって彼らの方向性がより明確に示されたわけで、これからの期待値というのは上がることはあっても、決して下がることはない。
若手の癖に妙に落ち着き払っているところが鼻につく方もいらっしゃるだろうが、それはつまり安定感という居心地の良い安心感にも繋がり、結果としてCapital Citiesの評価を底上げしていくものだ。

私も、こういった作品をきっかけにNu Discoはもちろんのこと、Electro Pop、特にSwedish Popあたりが日本でも注目されると非常に嬉しい。
この手の音楽は最高のラウンジミュージックだと思うし、例えばアシッドジャズなどに比べても、お洒落過ぎない立ち位置がとても気楽で居心地が良いのだ。
興味を持たれた方、まずはこのPVで彼らの素晴らしさを体感してもらえれば幸いである。





In a Tidal Wave of Mystery
Capital Cities
In a Tidal Wave of Mystery
曲名リスト
1. Safe and Sound
2. Patience Gets Us Nowhere Fast
3. Kangaroo Court
4. I Sold My Bed, But Not My Stereo
5. Center Stage
6. Farrah Fawcett Hair f. Andre 3000 and Shemika
7. Chartreuse
8. Origami
9. Lazy Lies
10. Tell Me How to Live
11. Chasing You f. Saseh Keshishyan
12. Love Away

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