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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

太陽の帝国はもっと評価されるべき

CD Review

Ice on the Dune

Empire of the Sun「Ice on the Dune」★★★★☆


帝国の逆襲

西暦1632年、ガリレオが地動説を唱える。
西暦1910年、アインシュタインによる相対性理論の完成。
西暦1961年、人類史上初の有人宇宙飛行。
西暦1981年、スペースシャトル就航。
西暦1995年、国際宇宙ステーション計画がスタート。
西暦2007年、Empire of the Sunの誕生。

The Sleepy JacksonのLuke Steeleと、PnauのNick Littlemoreが結成したエレクトロ・デュオ、それがEmpire of the Sunだ。
2008年に1stアルバム「Walking on a Dream」を発表し、地元オーストラリアでは最高位6位を記録。
2009年に開催されたARIA Music Awardsでは11部門にノミネートされ、Best VideoやAlbum of the Yearなど7つの賞を総嘗めにするなど、新人としては絶好のスタートを切ったと言えるだろう。
事実、「Walking on a Dream」の出来は良く、中国は上海で撮影されたタイトル曲のPVは当時のYou Tubeでも大きな話題となっていたほどだ。

片やClub Musicとして見れば、この2008年〜2009年というのはNu Discoが声高に叫ばれる直前の時期とも言え、その先駆けとしてシーンに道筋をつけたアーティストと考えれば、これは決して無視することの出来ない存在である。
ただ、その衣装やメイクなど、視覚的なパフォーマンスにどこか一発屋的雰囲気が拭えなかったのも正直なところで、私もこの1stアルバムでプロジェクトは終了、そう思ってここ数年を過ごしていた。

ところがー。

西暦2013年、突如としてニューアルバムの告知及び先行シングルの発表が行われ、私を含めた世界中のEmpire of the Sunファンの度肝を抜いたのだ。
しかも、その先行シングルのタイトルは「Alive」。
え?生きている、だって?キミたち、一発屋じゃなかったの!?と思わず嬉しさのあまり泣き笑いしてしまうほどのサプライズ的タイトルである。
加えて、その楽曲自体も恐ろしいほどクオリティが高く、まさに新生Empire of the Sunとも言うべき、甘美でエモーショナルな極上のポップスの姿がそこにあった。

この時点で興味が湧いた方には、ぜひとも本記事に掲載している当該PVをご覧になって頂きたいと思う。
そのストーリー性ある映像の展開はもちろん見所だが、特に2分過ぎから始まる女性VoによるCメロは、まるで人類が月面に降り立った瞬間のように美しく、この点に共感出来る人なら彼らの音楽性にきっと満足頂けることだろう。
日頃からCメロ原理主義者として世界各国のPop Muiscと対峙している私にとっても、この曲の持つ破壊力は王刀ライキリのように切れ味鋭いものだった。(注:モンハン参照)

もしかすると、今度の2ndアルバムは1stを超えるかもしれない。
そんな予感を胸に、私はこのMusic Videoを飽きるまで鑑賞し続けた。
30回、いや50回は超えただろうか。
この数ヶ月間、そう、本作が手元に届く今日まで。


全方位ブラッシュアップした最新作

さて、本日2ndアルバムが無事に手元に届き、3回ほどリピートしたところだが、結論から言おう。
この2ndアルバム「Ice on the Dune」」はEmpire of the Sunにとって最高傑作であり、エレクトロ・ポップが到達した1つの頂でもある。
正直なところ、1stアルバムは後半に進むにつれて楽曲の魅力が次第に薄れ、明らかに失速していく全体の流れに強い不満を感じていた。
私が彼らに対して一発屋という空気を感じてしまったのは衣装やメイクだけではなく、アルバムの品質そのものにもあったのだ。

今更得意気に語る話ではないが、アーティストの良し悪しはシングル曲ではなく、アルバム曲で十中八九が決まるものだ。
良し悪し、というよりは好き嫌いの問題だが、いくらシングル曲が良くてもその他の楽曲が足手まといになるようでは、まだまだコンポーザーとしての本領が発揮されていないと私は判断する。
これは例えば今年の春にデビューしたGold Fieldsなどがその典型であり、シングル曲「Dark Again (Lights Out)」の良さだけが1人歩きする結果となってしまったことは、彼らの1stアルバムを聴いた方ならご理解頂ける話だろうと思う。

Empire of the Sunは、そのような自身の1stアルバムにおける失態をきちんと把握した上で、本作の制作に取りかかった痕跡がある。
そうでなければ、これほど均整の取れた美しい作品にはならなかっただろうし、名曲「Alive」などもこの世に生まれていなかったはずだ。
今回、全12曲という収録数の中で、前半にその「Alive」、中盤に「I'll Be Around」、そして後半に「Disarm」というように、要所要所で核となる高品質な楽曲が配置されているのだが、これが全体の世界観を破綻させることなく、最後までリスナーの心を掴む結果となっていることに、惜しみない賛辞の拍手を送りたい気持ちで一杯だ。
およそ前作に感じた欠点はしっかりと改善されており、特に多幸感あふれるアレンジを施した楽曲が増えたのは嬉しい誤算だった。
残念ながら1stアルバムでネガティブな印象を抱いてしまった方にこそ、ぜひ本作はチェックすべき価値があると、改めて断言しておきたい。

もう1度、Club Musicという枠の中での話をすると、世界的にはパーティー系Houseミュージック、いわゆるEDMが各国を席巻している状況だが、Empire of the Sunのように家でも車でもリラックスして楽しめるNu Disco全開なエレクトロ・ポップは大変貴重な存在である。
しかも衣装やメイクはもちろん、その歌詞や世界観までもコンセプチュアルにまとめた彼らの姿というものは、世界的に見ても希少価値が高いのは明らかだ。
当然に、私たち健全なるリスナーは彼らを保護し、その成長を見守る必要と義務がある。
かつてDaft PunkUnderworldを受け入れた時のように。

願わくば日本のチャートにも頻繁に顔を出して欲しい存在だが、もしそのような状況になった時、長らく低迷する日本の音楽市場は夜明けを迎えることになるだろう。
なぜなら、彼らこそが「太陽の帝国(=Empire of the Sun)」なのだから!





Ice on the Dune
Empire of the Sun
Ice on the Dune
曲名リスト
1. Lux
2. DNA
3. Alive
4. Concert Pitch
5. Ice On the Dune
6. Awakening
7. I'll Be Around
8. Old Flavours
9. Celebrate
10. Surround Sound
11. Disarm
12. Keep a Watch

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