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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

Seventh WonderはDream Theaterを超えられるか

CD Review

The Great Escape

Seventh Wonder「The Great Escape」★★★★☆


Dream Theaterの功罪

プログレッシブメタルというジャンルを語る時、Dream Theaterの存在を避けて通ることは出来ない。
1992年に発表された2nd「Images And Words」は今でも彼らの代名詞的存在とも言うべき、屈指の名盤である。
彼らにとっても出世作であるこの作品がHR/HMシーンに与えた影響は凄まじく、近年になっても「Images And Words」のフォロワー的アルバムのリリースが後を絶たない。

古くはYesなどのプログレッシブロックに始まり、その後市民権を得たIron Maidenに代表されるNWOBHM勢における様式美を柔軟に取り入れた結果がDrean Theaterの骨格を成すスタイルである。
似たようなバンドにAsiaやRushといった「先輩達」もすでにシーンで一定の支持を得ていたが、彼らとは確実に一線を画した理由があった。
それは、HR/HMが本来持つヘヴィネスさの追求である。

この事を裏付けるかのように、名盤「Images And Words」以降のDream Theaterプログレッシブメタルの深層部分へと突き進む。
ある意味でヘヴィネス偏重の流れは彼らの曲調さえもダークな路線へと変え、およそポップな楽曲は見る影もなくなった。
ここがファンの分かれ目となり、良くも悪くも、Dream Theaterは玄人好みなバンドへと成長していった経緯がある。

繰り返すが、このように現在も精力的に活動するDream Theaterが、HR/HMシーンに与えた影響は非常に大きいものがある。
特に演奏技術の重要性を改めて世界に問うたことはシーンにとって大変意味のあるものだったと言えよう。
そもそもヘヴィメタルの歴史自体が、演奏技術の向上とセットで語られるべきものである。
これはテクノやハウスの歴史が音楽機材の発展とともにあるのと全く同じことだ。
もし、バンドもリスナーも演奏技術にこだわらなければ、こうしてパンクが全世界で衰退することもなかっただろう。
これは、70年代、パンクへのカウンターカルチャーとしてヘヴィメタルが市民権を得た歴史というものを、今更誰も否定することは出来ないはずだ。

この偉大なるDream Theaterの功罪として、演奏技術の向上に伴う楽曲のクオリティアップは間違いなくトピックの1つに数えられる。
まず、彼らに追随するためには高い演奏技術と卓越した作曲能力が必要不可欠となったのだ。
特に「Images And Words」が世界各国の市場で評価されて以降、にわかに彼らを真似するようなバンドが次々に登場したが、悲しいかな、当時から生き残っているバンドは指折りで数えるほどしか存在しない。
つまり、付け焼き刃のようなテクニカルな演奏だけでは到底太刀打ち出来る話ではなく、Dream Theaterのように確かな音楽理論を背景としたコンポーザーとしてのスキルも当然に求められるようになってしまったのだ。
これは例えば、経験の浅い若手のバンドにとっては憂慮すべき高い壁として目前に立ち塞がったことだろう。
音楽にはもちろん流行り廃りが当然あるが、今の時代でプログレッシブメタルに本気で取り組む若手が少ないのはその辺にも原因があるような気がしてならない。

私が思うに、プログレッシブメタルを語る時、1つの指標として存在する「Images And Words」があまりにも完璧過ぎる内容のため、後続のバンドたちはある意味で不幸ではないかということ。
時に非常に完成度の高い作品が完成したとしても、市場ではこの名盤と比較されることを当然に覚悟しなければならないからだ。

あえて言うならば、90年代以降のHR/HMシーンの旗手的存在がDream Theaterであり、そしてこの偉大なる巨人は未だ健在であるという事実。
この事実をまず認識した上で、今宵の本題に入りたいと思う。


新世代プログレッシブメタルの希望

プログレッシブメタルが単純にテクニカルの見せ場だけならここまでシーンは成長して来なかっただろう。
上段で述べたように、その高い演奏技術は素晴らしい楽曲の存在があって初めて光り輝くものだ。
すでに巷では、Shadow GalleryやPain of Salvation、Circus Maximusなど、所謂Dream Theater系とも言うべきバンドの隆盛は今に始まったことではない。
中でも、今夜紹介するSeventh Wonderの成長は加速度的であり、4作目となる「The Great Escape」(2010年発表)は非常に高い完成度を誇る作品に仕上がっていた。
残念ながら、あの「Images And Words」を超えたとは思わないが、質感としてはかなり肉迫した内容となっており、ぜひこの機会に紹介させて頂きたいと思う。

Seventh Wonder。
2000年にスウェーデンで結成され、2005年に1st「Become」でデビュー、翌2006年に2nd「Waiting in the Wings」、2008年には3rd「Mercy Falls 」がリリースされ、特にこのコンセプチュアルな3作目は国内外でも高く評価され、知名度も大きく上昇したように思う。
そこから満を持してのリリースとなったのが本作「The Great Escape」である。

収録曲こそ7曲と少ないが、最後の7曲目が30分を超える大作となっており、ボリューム不足といった批判は的外れである。
ほぼ全曲、美旋律に彩られたプログレッシブメタルが味わえるが、アルバムの核となるのは2曲目の「Alley Cat」であり、この曲の完成度の高さは、Dream Theater好きをきっと唸らせることになるだろう。
ヘヴィネスなイントロからサビに至るまでのアレンジはもちろん、定評あるTommy Karevikの歌唱力と各メンバーの高い演奏技術が高次元で融合した稀有な1曲である。
私などは聴いた瞬間、思わずプログレッシブメタルの歴史に新たな1ページを刻んだ名曲だと信じて疑わなかったのだが、果たしていかがだろうか。

例えばメロディの組み立てが日本人好み、と言えばいろいろと詮索する向きもあるかもしれないが、昔からテクニカルとポップの融和については寛容な市場である。
本来は対極にあるような要素が、実はバランス良く配合された楽曲というものに私達はきっと弱いはずだ。
Megadethの「Rust In Peace」が今なお評価されている理由、それはスラッシュメタルという徹頭徹尾なジャンルにインテリジェンスなアレンジを大胆に持ち込んだからに他ならない。
それではSteve Vaiの「Passion & Warfare」は駄作だろうか?
もちろん否、あの作品はテクニカルとポップが同居したギターインストアルバムの最高峰であろう。
元来、メタルとは思考する音楽なのである。
古来より物語や短歌など「もののあはれ」に慣れ親しんできた私達日本人のDNAが、そこに魅了されるのは当然の結果と言えるのではないだろうか。

Seventh Wonderは北欧のスウェーデン出身らしく、元々にしてポップの素養が備わっており、例えばこのアルバムでの美旋律は私達が住むアジアの小国においても高らかに響き渡るものである。
HR/HMの中でも、どこか敷居の高いイメージのあるプログレッシブメタルだが、「Alley Cat」のような美しい曲を目当てにこのジャンルの門をくぐるのも、決して悪くない選択だ。

結論として、この「The Great Escape」は往年のDream Theater好きにはもちろん、TNTなど北欧原産のメロハー好きにも自信を持って薦められる傑作と言えよう。
メタル特有のヘヴィネスな質感についてはあと一歩といったところだが、私にはむしろポップを意識したアレンジが好印象であり、この美旋律な歌モノ中心の路線はぜひとも継続してもらいたいと思う。
もはや偉大なる先人であるDream Theaterの真似をしても意味はなく、Seventh Wonderとして唯我独尊を極められるかどうかが今後の課題と言ってもいい。
出来れば本作のように、メロハー的プログレッシブメタルを味わえる作品を今後も作り続けて欲しいものだが、それはまた次回作に期待することにしよう。

先日はSwedish Popを記事にしたばかりだが、やはりスウェーデンと日本の相性はとても良い気がする。
1度は日本から撤退したIKEAが最近になってようやく受け入れられたように、時間はかかるかもしれないが、双方向性の文化的交流を積極的に推進したい国の1つでもある。
ライフスタイルは高負担高福祉と呼ばれる北欧だが、学ぶべき点は多い。





The Great Escape
Seventh Wonder セヴンス・ワンダー
The Great Escape
曲名リスト
1. Wiseman
2. Alley Cat
3. The Angelmaker
4. King Of Whitewater
5. Long Way Home
6. Move On Through
7. The Great Escape
8. In The Blink Of An Eye 2011 (bonus track)

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