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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

The 1975がUK Rockの救世主となる日

1975: Deluxe Edition

The 1975「The 1975」★★★★★


驚異的なサウンドプロダクション

全くUKという国は恐ろしい。
定期的に現れる、プロ意識の高い新人バンドの登場に、思わずこちらも舌を巻いてしまうほどだ。
さすが大英帝国、その威信は2013年の今日も健在と言えるだろう。

すでにPVなどで局所的に話題にもなっていたが、満を持して、UKはマンチェスター出身のThe 1975が1stアルバムを発表した。
実はリリース前に全曲試聴出来る機会があり、すでにそこで私も傑作の感触を得ていたのだが、今こうして手元にCDというフォーマットを手にして、改めて新人バンドとは思えない全方位に及ぶクオリティの高さに感心している次第である。

結論から言って、これは間違いなくCD音源で聴くべきものだ。
さすればサウンドプロダクション、平たく言えばつまり音質の素晴らしさをきっと体感出来ることだろう。
確かにwebで音源をダウンロードする方が安価でその後の取り扱いもかさばらないが、それでも音質にこだわりのある方はぜひCDを買って聴いて欲しい。
失礼は承知の上で言うが、よもや新人バンドの分際でこれほど音質にこだわるバンドもなかなかいない。
というより、新人故にサウンドプロダクションにはあまりお金をかけることが出来ない、というのが通常の世間の実情といったところだろう。
つまりThe 1975は、所属するレコード会社にとっても投資する価値のあるバンドだったと推察することが出来る。
詳細なクレジットはまだ確認していないが、恐らくきちんと機材の整ったスタジオで、素晴らしいプロデューサー及びエンジニアの功績があったんだろうと思う。

勘違いして欲しくはないが、私は別にピュアオーディオファンではない。
例えば発電所原子力と火力では音質が異なるなどというオカルト的な考えは全く持ち合わせていないし、むしろそれが本当だったとしても私の耳では聴き比べられない。
しかし、DJという職業柄、音質には一定のこだわりがあるのは事実だ。
それはもちろんジャンルを問わず、特にバンド系の音質については我ながらうるさい方だと思う。

バンドはエレクトロニックなサウンドと違い、主役級の生楽器が混在する分、全体のバランスの取り方が非常に難しいのだ。
加えて生楽器本来の粒立ち感も当然に伝えることが出来なければ、アンサンブルとしての臨場感が大幅に減退してしまう。
楽曲のクオリティは高いのに、音質が悪いせいで損をしてしまっているバンドなど、数え出したらきりがないだろう。
つまりは全体の総合演出を司るプロデューサーの存在によって、そのバンドの良し悪しが左右される理由というのはその辺にある。
大御所Coldplayが名匠Brian Enoをプロデューサーに迎える以前と以後では全く性質が異なるように、サウンドプロダクションはバンドの生死を分ける重要なファクターなのだ。


全曲シングルカットにふさわしい内容

さて、The 1975は典型的なUKギターロックの中でも、マンチェスター出身らしく、様々なジャンルからのアイデアの拝借が多いバンドである。
これはもちろん良い意味で、そこにブリットポップの手法やシューゲイザーの精神性が見え隠れするような、所謂レトロモダンでハイブリッド的な印象を受ける。
バンド名自体は古い年代のようだが、私は2013年の今だからこそ生まれたバンドだと思っている。

加えて、新人バンドとは思えないような落ち着いた楽曲のアレンジには少々驚かされた。
随所において、丁寧に、そして綿密に練り込まれた痕跡があり、それを証明するかのようなバラエティ豊かな内容及び構成は、まるでロックの新人らしくない。
すでに3枚か4枚ほどのフルアルバムをリリースしているかの如く、どこかベテランの風格さえ漂わせる彼らの姿に、恐らく誰もが面食らうこと必至だろう。

そのため、このバンドに限ってはよくある新人評価の「荒削り感」はほぼ皆無であり、未完の大器などという表現はお門違いだ。
私に言わせれば、彼らのスタイルはすでに完成されている。
ただ、そこが人によっては退屈に聴こえてしまう恐れもある。
皮肉にも新人にしては出来過ぎているだけに、この完成度の高さが逆に懸念材料になってしまうのだ。

それは例えばMystery JetsやFoster the Peopleなど、インディーロックの先輩格にあたるバンド達に一歩も引けを取らない佇まいである。
音作りにおいても積極的にエレクトロニックな打ち込み系音源を多用し、M83のような幻想的な雰囲気を醸し出しているのも好印象だった。
私としては退屈どころか驚きと発見の連続だったと言っていい。
UKロック特有の湿度の高いソリッドな側面は控え目だが、甘酸っぱく瑞々しい歌詞とともに、全体を包む世界観は暖かく居心地の良いものだ。

これが平均年齢24歳の4人組とはにわかに信じ難い。
冒頭でも述べたように、プロデューサー及びエンジニアの手腕もあっただろうが、このポテンシャルの高さは驚異的だろう。
デビュー時のColdplayのようなある種の悟りを開いた感覚とは若干異なるが、世の中を達観した目線を持っているのは確かだ。

改めて言うまでもなく、全16曲収録の本作は、冒頭から「The City」、「Chocolate」、「Sex」、「Heart Out」、「Settle Down」、「Robbers」、「Pressure」など粒揃いの楽曲が目白押しである。
まさに全曲シングルカットにふさわしい出来だが、特に「Sex」と「Robbers」はThe 1975を代表する楽曲と言っても過言ではない。
どちらも歌詞が意味深で素晴らしく、「Sex」においてはShe's Got A Boyfriend Anywayのリフレインが頭にこびりついて離れない。

この心地良いノスタルジックの正体は一体何だ?
未だ私にはその謎が解けないが、この清涼なるヴァイブスはPVとともにぜひ味わって頂きたいと思う。
恐らく過去にマッドチェスターやブリットポップ、そしてシューゲイザーオルタナティブなどを通過してきた人ほど、このかっこ良さがきっとお分かり頂けるはずだ。

私としては、2011年にデビューしたThe Vaccines以来の衝撃を受けたバンドである。
すでに各国でも人気に火が点いてきたので、もはやShe's Got A Boyfriend Anywayならぬ、He's Got A Girlfriend Anyway状態だろう。
そしてこの音はきっと日本でも受け入れられるはずだ。
果たして、The 1975がUK Rockの救世主となるかどうか今後の活躍に期待したい。





1975: Deluxe Edition
1975
1975: Deluxe Edition
曲名リスト
1. The 1975
2. The City
3. M.O.N.E.Y.
4. Chocolate
5. Sex
6. Talk!
7. An Encounter
8. Heart Out
9. Settle Down
10. Robbers
11. Girls
12. 12
13. She Way Out
14. Menswear
15. Pressure
16. Is There Somebody Who Can Watch You

1. Facedown
2. The City
3. Antichrist
4. Woman
5. Intro/Set3
6. Undo
7. Sex
8. You
9. Anobrain
10. Chocolate
11. HNSCC
12. Head.Cars.Bending
13. Me
14. The City
15. Haunt // Bed
16. So Far (It's Alright)
17. Fallingforyou

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