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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

日本よ、これがUS Rockだ(Vertical Horizon)

Echoes from the Underground

Vertical Horizon「Echoes From the Underground」★★★★☆


待望の新作

幾多あるUS系ロックの中でも、今宵紹介するVertical HorizonはHR/HM好きな私にとっても特にお気に入りのバンドである。
もはやアメリカンロックの重鎮であるBon Joviや、超新星の如く現れたDaughtryなどの陰に隠れて、なかなか日本では話題に上らないバンドだが、その実力は折り紙付きだ。
そこにはUSA出身らしい大陸的な気風はもちろん、欧州特有のウェットな哀愁情緒を漂わせるあたり、他の同郷ロックバンドとは確実に一線を画すバンドとして知る人ぞ知る存在と言えよう。

しかし、2009年の「Burning the Days」(6th)リリース以降、バンドとしての音沙汰がなく、こちらもかなり心配していたのだが、今月になってようやく新作「Echoes from the Underground」がお披露目となった。
まずはこの新作発表を素直に歓迎したい。
作品としての出来はともかくとして、Vertical Horizonがこうして存続していることに対して、思わず神に感謝せざるを得ない。
それだけ思い入れのあるバンドであることはご理解の上、今回の紹介記事をご覧頂ければ幸いだ。


散漫で高品質な傑作

Vertical Horizonは美旋律を主軸にAOR的な楽曲アレンジを得意とするバンドである。
その集大成として君臨する前作「Burning the Days」のクオリティの高さは今更ここで私が言うまでもなく、つまり今回の新作は前作をどう乗り越えるかがポイントだった。
結論から申し上げよう。

本作は散漫で高品質な傑作である。
矛盾している表現かもしれないが、3回続けて通して聴いた私の率直な感想だ。

少し説明すると、所謂全体を包む世界観というものは過去最高にバラエティ豊かな内容仕上がっており、これは悪く言えば散漫で抽象的とも言えるだろう。
これまでのVertical Horizonらしい、澄み切った青空を容易に想起させるかのような楽曲もあれば、ColdplayKeaneのように内省的でメランコリックな楽曲の存在も同じように目立つからだ。
無意識に前作の延長戦を求めていた私にとって、この内容及び構成には軽い衝撃を受けてしまった。
見方によってはちぐはぐな印象もあり、もっと意地悪な言い方をすれば、これまでリリースしてきたシングルのB面集的アルバムではないかと。
しかしそれは2回、3回とリピートして聴いていくうちに、私の中にあった不安と杞憂は静かに消失していった。

確かに散漫である。
これはアルバムの構成、つまり曲順も少なからず影響しており、特にオープニングの配置については失敗ではないかと思う。
バンド側からすれば計算通りなのかもしれないが、1曲目と2曲目における従来のVertical Horizon節から、3曲目以降、突然雰囲気が変わってしまうのだ。
これには私も自身の脳内をシフトチェンジするのに少々時間がかかってしまった。
オープニングでいつも通りの変わらない彼らの姿に安心したのも束の間、急に人が変わったようなサウンドになってしまったのだから当然である。

かと言って、それがVertical Horizonらしくない楽曲、ということでもない。
USA出身という足枷から解き放たれたかのような、どこか英国調で湿度の高い美旋律の応酬に、私は内心から沸き上がる喜びを隠せなくなった。
特に「Evermore」と「Lovestruck」という楽曲の存在感は突出しており、この新機軸な方向性は無条件に褒め称えるべき内容だと確信する。
そこでの音色の選び方はもちろん、アレンジ能力も飛躍的に向上しており、私にとっては誤算の展開だが、同時に嬉しい驚きでもあった。

もちろんオープニングにあったような牧歌的でピースフルなVertical Horizon節は各所で健在である。
例えば「Half-Light」や「Consolation」、「I Free You」などは前作に収録されていても全くおかしくはない、安定の美メロが味わえる。
加えてそこに先ほどの欧州的でメランコリックな楽曲が挟み込まれ、アルバム全体としてのまとまりには欠けるものの、恐ろしく高品質であることは否めない作品となっているのだ。

果たしてこれをVertical Horizonの新たなる挑戦の第一歩として、好意的に感じ取るかどうかは人それぞれだが、私は素直に本作を肯定したいと思う。
美旋律を愛する人間にとって、このアルバムは様々な味が楽しめるからだ。
そこにはUSAという枠に収まりきれない膨張するバンドの姿があり、今後のコントロールの難しさを象徴する作品であることも否定出来ないが、ひとまず結果は残したという意味でも本作は成功であろう。

前作からおよそ4年の沈黙を破り、Vertical Horizonはさらに上を目指す姿を披露してくれた。
このポジティブなヴァイブスこそがUSAの底力であり、畏怖の根源でもある。
日本はこのフロンティア・スピリットを真正面から受け止めてこそ、初めてTPPの交渉のテーブルで対等に対峙することが出来るのだ。
そう、彼を知り己を知れば百戦殆うからず、である!

Welcome Back! From the Underground!





Echoes from the Underground
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Echoes from the Underground
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