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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

最新のサトリアーニは最高のサトリアーニである

Unstoppable Momentum

Joe Satriani「Unstoppable Momentum」★★★★★

ポップとテクニカルが心地良く同居した新作

Joe Satriani先生(以下、先生)が今年発表した「Unstoppable Momentum」の出来があまりにも素晴らしかったので記事にしておく。
世のギター弾きからすれば、すでに彼は有名すぎる存在なので詳細なインフォメーションは避けるが、57歳にして全く衰えない演奏技術と創作意欲には思わず拍手喝采である。

特に今回の作品は全曲捨て曲なしのクオリティであり、ここ数年の先生の代表作でもある「Super Colossal」さえも凌駕するほどの出来と言えるだろう。
これは恐らく新加入したVinnie Colaiutaの存在が大きいと思われるが、彼の職人気質なドラミングによって先生のギターがここまで艶っぽく躍動感豊かになるとは予想外だった。

また、曲調によっては初期の代表作でもある「Surfing With The Alien」や「The Extremist 」時代を彷彿とさせるファンキーなリズムが展開され、そこに現代的なアレンジが施された先生のポップでウォーム且つブライトなギター美旋律が絡み、唯一無二の独特なグルーヴ感を産み出していることも明白な事実だ。
とりわけアレンジの上手さが随所で光る作品に仕上がっていることは重ねて申し上げておきたい。
平均4分〜5分というコンパクトな楽曲構成において、どの曲も最後まで飽きさせない工夫が見られ、所謂インスト作品における致命的な欠点を上手くカバーした格好だ。

オープニングでタイトル曲でもある「Unstoppable Momentum」こそ地味な印象だが、続く「Can't Go Back」から「Lies And Truths」、「Three Sheets To The Wind」のファンキーポップ3連発でこのアルバムの出来の良さは保証されたようなもの。
その後に訪れる短いバラード曲「I'll Put A Stone On Your Cairn」から「A Door Into Summer」に流れていくこの神々しさは一体何だ?
続く「Shine On American Dreamer」や「Jumpin' In」については、別プロジェクトでもあるChickenfootの活動が確実にフィードバックしたと思われる痕跡を十二分に残しているし、その後の「Jumpin' Out」に至っては先述したアレンジスキルが見事に奏功した本作を代表する1曲。
まるで70年代に時を戻したかのような、こうした時代感覚をギター1本で縦横無尽に跋扈する、これぞサトリアーニ節の本質がそこにある。
終盤はパワーバラード調でありながら80年代的なリフが特徴的な「The Weight Of The World」が花を添え、終曲「A Celebration」は自身の名曲「Summer Song」顔負けのギターインスト分野における教科書的楽曲に仕上がっている。

全11曲、全く隙のない作品である。
確かに先生のプレイはいつも通りで味気ないと感じる向きもあるかもしれないが、モダンとクラシックが同居したような、ある意味で新生Joe Satrianiとも言えるほどのハイブリッドな内容であったことは私自身、嬉しい驚きだった。

前作「Black Swans and Wormhole Wizards」までは良くも悪くも「Strange Beautiful Music」以降の続編的な内容だったように思う。
それがワンパターンの美学として存在していたのも事実で、言うなればファンのための作品という位置付けでもあっただろう。

しかし、本作が示した方向性は明らかに「Strange Beautiful Music」をさらに進化させた所謂次世代のサウンドであり、新たなファン層の開拓も十分に可能なポテンシャルを秘めている作品と言える。
いくら世界広しと言えども、ここまでポップとテクニカルが理路整然と語られた楽曲群もなかなかない。

例えばアルバム単位で言えば、必ず1曲や2曲は捨て曲(クオリティが低いという意味ではない)が存在するのもインスト作品の宿命である。
つまりこの手の作品のほとんどが演奏技術のお披露目会と化しているのに対し、Joe Satrianiの視点の先にはあくまでも一般オーディエンスの姿がある。
もちろん、ギターキッズにとっても憧れの存在であることに変わりはないが、本作はそうしたバランスの良さが突出しており、まさに最新のサトリアーニが最高のサトリアーニであることを決定付けた作品として、傑作に値すると思う。

私も一時期、サトリアーニモデルのギターが欲しくてたまらなかったが、またその欲望に火が点きそうな今日この頃である。
そして先生、そろそろ来日してください!




アンストッパブル・モメンタム
ジョー・サトリアーニ
アンストッパブル・モメンタム
曲名リスト
1. アンストッパブル・モメンタム
2. キャント・ゴー・バック
3. ライズ・アンド・トゥルース
4. スリー・シーツ・トゥー・ザ・ウィンド
5. アイル・プット・ア・ストーン・オン・ユア・ケアン
6. ドア・イントゥー・サマー
7. シャイン・オン・アメリカン・ドリーマー
8. ジャンピン・イン
9. ジャンピン・アウト
10. ザ・ウェイト・オブ・ザ・ワールド
11. セレブレイション

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