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NEODEAD MUSIC BLOG

音楽を思考する

The Last of Us レビュー

Game Review

はじめに

The Last of Us(以下、LoU)はクラッシュ・バンディクーアンチャーテッドなど有名タイトルを多数輩出してきたNaughty Dog社が開発したTPS作品。
PS3専用タイトルのため、発売元はソニー・コンピュータエンタテインメントである。
2013年6月14日に北米で発売され、同月20日には日本でも全編吹替版として発売された。
定価は税込5,980円。CEROレーティングはZ(18歳以上対象)である。

堅実な実績のあるNaughty Dog社が手掛ける世紀末パンデミックゲームとして、本タイトルは発売前から多くの期待が寄せられていた作品であり、実際のところ海外レビューでは各所で高得点を連発し、発売1ヵ月後の時点で340万本が出荷されるなど、まさに2013年を代表するタイトルと言えるだろう。

このたびダウンロード版のリリースをきっかけに、私もようやく本作を遊ぶ機会に恵まれたので、いつものように簡素な感想を残しておこうと思う。
我ながらゲームに関するレビューは昨年の11月に書いたHalo 4以来となる故、少々筆が滑ってしまった部分もあるかも分からないので、最初にその旨ご了承願えれば幸いである。
ちなみに今回言及するのはキャンペーン本編の内容についてのみであり、おまけ的要素でもあるマルチプレイについては割愛させてもらった。


美しい退廃的世界観とアメリカンドラマ的な演出

昨今、地元アメリカのみならず、ここ日本でもThe Walking Deadというアメリカンドラマが人気だ。
その名の通り、ゾンビをモチーフにした典型的な現代アメリカンドラマの1つだが、そこでは個性あふれる登場人物同士の香ばしい人間模様が中心に描かれており、安直な恐怖に終始する一般的なホラー作品とは一線を画する内容に仕上がっている。

誤解を恐れずに言えば、本作LoUは退廃的な世界観を舞台にしたThe Walking Dead的シナリオが楽しめるゲームである。
もちろん、LoUはパンデミックから20年が経過したアメリカを舞台にしているため、時代設定からしてThe Walking Deadとは明確に異なるのだが、両者の根底にあるテーマは共通しており、つまり「極限状態に置かれた人間同士の資源の奪い合い」にある。

要するに普通ではない状況=非日常的空間において、人間が生に執着する意味及び意義を問うたシナリオであるということをまず明記しておきたい。
まずはじめに、このような人間ドラマ的側面があることを理解しておかないと、これは後段でも詳しく述べるが、ホラー的要素に物足りなさを感じたり、肝心のエンディングに食い足りなさを抱いてしまう恐れがある。

ゲームの基本骨格はドラマパートと戦闘パートの繰り返しだが、特にドラマパートにおける開発陣の力の入れ込み方は鬼気迫るものがあり、それは登場人物のリアルな表情ひとつ見ても瞬時にお分かり頂けることだろう。
例えば冒頭に訪れるパンデミック直後のシーンなどは、ここ数年の他作品のシングルキャンペーンと比べてもトップクラスのクオリティと言っていい。
開発者にしてみれば、このオープニングによって一気にToUの世界に引き込もうとする算段だろうが、それは見事に成功している。
具体的にはシネマティックなカメラワークや効果的なサウンドデザインなどの演出によって、重厚感のある人間ドラマが繰り広げられているのだ。

しかしながら、そのようなドラマ部分のシナリオに魅力を感じなければ、もしかすると最後までプレイするモチベーションが持続するのかどうか、疑わしい側面があるのも本作の特徴である。

結論を急ぐつもりはないが、本作はアメリカンドラマ仕立てのアドベンチャー風TPSという表現が的確かもしれない。
これはアンチャーテッドのような日曜洋画劇場的なゲーム展開を得意としてきたNaughty Dog社ならではの視点から生まれた作品とも言え、まずはシナリオ、そしてカメラワークや音楽などの演出面を堪能することが本作を理解する最初の第一歩ではないかと私は考える。


奥深いステルス要素と平凡なシューター

建前上、本作をTPSと表現したが、戦闘パートにおける操作性は極めて良好とは言い難い出来である。
それは銃器を使用したシューター部分に集約してしまうのだが、およそGears of WarDead Spaceなどの名作TPSをプレイ済みの人間からすれば、悲しいかな、ToUは極めて平凡と言わざるを得ない。
カバーシステムも搭載されてはいるものの、操作性自体がフレキシブルにプレイヤーの要求に応える類いのものではなく、はっきり言ってしまえば世のシューター好きにとっては少々残念な仕上がりと言えるだろう。

この時点で勘の良い人ならすでにお気づきだと思うが、要するに本作の戦闘は敵をエイムして銃撃し続けるような、所謂シューターがメインではない。
物陰に隠れ、敵に見つからないように暗殺又はやり過ごす、いわばステルス戦闘がメインなのである。

本作のステルスはプレイヤーが聞き耳を立てることによって敵の位置をモニタリングするという、原始的且つ独創的なアイデアをモチーフとしており、パンデミック後の世界というサバイバル感を演出するにしても、これはこれで素晴らしい発想だと思う。
ゾンビ、いや感染者にも種類があるのでプレイヤーもその場その場で対応手段の選択を迫られるが、やはりステルス特有のかくれんぼ的緊張感は痛快無比の面白さがある。

舞台となる戦闘マップも単純な作りでありながら、遮蔽物はもちろん、ちょっとした高低差も加えられており、攻略が1本道でないことはリプレー性の高まりを意味し、とどのつまり、好印象を自然に誘発するものだ。
加えてガラス瓶や時限式爆弾など、数は少ないがステルス戦闘に有効なガジェットの存在もあり、いわば原始的なSplinter Cell気分が味わえると言っても語弊はない。

ただ、1度見つかれば必然的に持っている銃器や鈍器で強制的なドンパチ戦闘が始まってしまうので、私などは敵に見つかった瞬間に直前のチェックポイントをロードしてやり直す、というステルスゲームにありがちな「リスタート反射行動」が何度も出てしまった。
そのため、元々ステルスによる戦闘が苦手であり、シューターもあまり得意ではない、という方には要注意といったところ。

そこでプレイヤーの不得手を補う役目として、本作のレベルアップシステムの話になるのだが、これは次の段落で詳しく解説しようと思う。


未熟なレベルアップシステム

本作においては、すでにシューター部分の操作性そのものがあまり良くないということについて言及したが、そうした不満点を補う役目としてレベルアップシステムの存在がある。
簡単に言えば、ピストルやショットガン、弓、火炎放射器などにおいて、リロード時間を短縮出来たり、込める弾薬数をアップしたりするような、古くはバイオハザードの時代から脈々と続く武器アップグレードの概念である。

本作ではこれが上手く機能していない。
つまり、レベルアップしたところで自身の強さを実感出来ないもどかしさが、驚いたことにエンディングまで続いてしまっているのだ。
これは武器アップグレードとは別に設けられた、プレイヤーの体力ゲージや聴覚能力の向上など、身体的なスキルに関わるものについても同様である。

もちろん、本作の戦闘がステルスメインであることも自ずと関係してくるだろう。
言ってしまえば、体力ゲージを上昇させたり武器を強化したところで、ステルス行動が成功すれば特に意味を成さないというカラクリだ。
開発陣も恐らくこの点は把握していただろうと思う。

だからこそ穿った見方になるが、本作のようなゲームスタイルにおいて、このレベルアップシステムが本当に必要だったのかどうか、そこは怪しいところだ。
そもそもステルスに比重を置くのであれば、リロード短縮よりもまずはサイレンサーの装着ではないだろうか?
かつてのSplinter CellMetal Gear Solidで育った私でさえ、発砲音を発した時点でプレイヤーの負けが確定するなど世の中の常識として理解しているつもりだ。
無闇に武器を強化したところでステルスの邪魔になるぐらいなら、それなら最初から必要ないという話になる。

いっそのこと、レベルアップ制は身体的能力(体力ゲージなど)ぐらいにして、後は拾える武器やガジェットのバラエティを増やした方がまだ良かったように思う。
例えばステルスで敵を暗殺するアクションにしても、絞め落とすか、ナイフを使うかのほぼ二択というのも寂しい。
その辺に落ちているビニール袋だって相手を窒息死させることぐらい出来るし、プラスドライバーなど工具を使って敵の視界を奪う方法(※自主規制)など、それこそゲームのカタルシスを向上させるアイデアは無数にあったはずだ。
こうした限定的なステルスアクションと安定しないエイム、主にこの2つが本作での爽快感を阻害した要因ではないかと私は考える。

しかしながら、この機能不全に陥ったレベルアップシステムのおかげで終盤まで緊張感(=難易度)が一定に保たれたという側面もあり、それがプレイヤーにとって幸せなのか不幸なのか、私には判断出来ない。
それを怪我の功名とまでは思わないが、レベルアップの仕組み自体がまるで感染者の吐き出すガスのようにスッキリしないものだったことは重ねて明言しておきたい。

レベルアップの概念を導入するなら、Borderlandsのスキルツリーシステムとまでは言わないが、もう少しRPG的な自身の強さを実感出来るゲーム性を確保して欲しかったのが本音である。


ホラーを緩和させるコンパニオンの存在

話変わって、本作の特徴的とも言える核心部分について踏み込んでみたい。
果たして本作はホラーゲームに属するかどうか、という問題である。
まずもってこれは各自の主観で判断して頂くしかないが、エリーという少女をコンパニオンとして連れ歩く以上、Fallout 3Skyrimのような孤独感は皆無である。
それは暗闇に包まれた廃墟の中であってもSilent HillSirenのような言い知れぬ恐怖感というものはほとんど感じなかった。

私が考えるゲームにおける恐怖の3点セットとは、暗闇、音、そして孤独感の3つである。
この3つの要素が高次元で融合する時、ホラーゲームはその役割を明快に果たす。

本作は退廃的な世紀末風世界観を舞台にしており、これは必然的に廃墟を探索するシーンが多い。
そこにはもちろん暗闇が存在し、昼間であってもヘッドランプ1つでの行動を余儀なくされるケースもある。

そこに出現するゾンビ的感染者は冬虫夏草をベースにしたキノコテスク(※グロテスクの意)な造形をしており、まるで乾いたノドを鳴らすように、カラカラカラと不気味な音を発している。
まさに暗闇でドッキリ(古いネタで申し訳ない)、廃墟で出会えば間違いなく恐怖そのものである。

しかし、本作はシナリオ上、常にコンパニオンと一緒に行動することが前提にあり、これが妙な安心感に繋がってしまっているのだ。
しかも後半にかけては、エリーが主人公顔負けの暴れっぷりを見せるため、私としてはせっかくのホラー的舞台があまり生かせてないように感じてしまった。
もちろん、コンパニオンを守るというテーマがシナリオに組み込まれている以上、野暮なことは言いたくない。
それでもホラーゲーム好きにとっては期待していた部分だっただけに、恐怖感の演出はもう少し頑張って欲しかったように思う。

例えば別行動のチャプター(ソロ活動パート)がもっと多くあればまた印象も変わっていたのかもしれない。
探索も廃墟のみならず、地下街や洞窟といったさらに閉鎖的な空間の提供があればもっとプレイヤーのイマジネーションは刺激されたのではないだろうか。

とはいえ最近流行りのCoopゲーに傾倒するゲームデザインを否定するつもりは全くなく、むしろ本作のシナリオを理解する上ではコンパニオンとの絡みは絶対的必要事項と言える。
ただ、廃墟をうろつく不気味な感染者との対峙が本作の目玉の1つであることは間違いなく、だとすればホラーゲーム特有の恐怖感は全編を通して味わいたかったという意見も自然だろうと思う。
加えて、せっかくのCERO Z指定なのだから、そこは遠慮する必要もなかったのではないだろうか。


まとめ

本作に対する客観的な評価は難しい。
まずシナリオや演出といったドラマパートは高品質そのものであり、これは実際のアメリカンドラマに一歩も引かない、高いエンターテインメント性を実現している。

しかしその反面、ゲームの根幹である戦闘パートは不可解なレベルアップシステムの影響もあって、ステルス行動を半ば強制させられる仕様となっている。
私のようなステルス好きには申し分ないが、シューター好きにとっては果たしてどうだろうか。

要は、本作に何を求めるかで評価も変わってくるだろう。
Heavy Rainのように濃密なシナリオとシネマティックな演出を味わいたいなら、LoUは間違いなく名作と位置付けることが出来るだろう。
しかし、ゾンビというモチーフにつられてDead IslandやDead SpaceのようなFPS/TPSを期待すると若干の肩透かしは避けられない。
加えて、Splinter Cellなどのステルスゲームに普段から精通している方にとっては、本作のゲーム部分がまだ未完成であることに気付いてしまうかもしれない。

率直に申し上げて、私はLoUを最後まで楽しめた人間だ。
しかし、2周目をプレイするモチベーションは残念ながら上がらなかった。
念のため、私が生来の飽き性であることは付け加えておくが、確かHeavy RainAlan Wakeの時もそうだった。

本編のシナリオが面白く、その先が気になるだけに、1度結末が分かってしまえばモチベーションの維持は難しい。
エンディング自体も分岐するわけでもなく、ストーリーは基本、一本道である。
Batmanシリーズのように何度もリプレーしたくなるようなゲーム性とまでは言えず、この辺りは残念としか言いようがない。

単純に面白いか、面白くないかで言えば、間違いなく面白い作品である。
すでに似たような切り口の作品は存在していたが、イノベーションという意味ではLoUが頭一つ抜けた感があるあし、恐らく世のゲーム好きにとって、本作をプレイしない理由はあまり見当たらないと思う。
しかし、人によっては本作のエンディング同様、煮え切らない戦闘パートに不満を抱いてしまう恐れがあることは、今一度申し上げておきたい。
良作ではあるものの、神ゲーと呼ぶには時期尚早のような気がしてならないのだ。


おわりに

本記事の冒頭で私はこう言った。
LoUは退廃的な世界観を舞台にしたThe Walking Dead的シナリオが楽しめるゲーム、であると。
これに付け加えるとするならば、保護者視点のステルスアクションホラー、と言える。

保護者、つまりコンパニオンゲームの最新版という側面がLoUにはある。
古くはPS2時代における名作ICOから続くもので、記憶の新しいところではBioshockがこれに該当するだろうか。
そのほかFallout 3Fallout NV、そしてSkyrimでもコンパニオン要素が健在なのは言うまでもない。

しかもLoUは現時点において最良とも言えるAIを実装しており、これは技術的にも賞賛に値する。
今後、ますますコンパニオンゲームの進化が進むことになることを自らで予兆したかのようなクオリティである。
そもそもホラーゲームに同伴が必要かという疑問はさておき、ひとまずこの功績は称えるべきであろう。

気になるのは、本作に続編があるのかどうか。
海外のコラムでは続編は作るべきではないと断言していたが、私からすると未完成でもある戦闘パートをブラッシュアップした外伝的作品ならあってもいいと思う。
例えばその主役はジョエルの弟であったり、ファイアフライの女ボスであったり、時間軸を変えればシナリオ的にも決して不可能ではないはずだ。
随所で革新性をアピールしてきた本作が、1作で閉幕するにはあまりにも惜しい。

さらに言えば、これはNaughty Dog社の沽券に関わる話でもある。
願わくば、レベルアップシステムを刷新し、ステルスに特化するならアクションのバラエティを増やすなど、さらなるイノベーションを望みたい。
かつてのAlan WakeのようにDLCでお茶を濁すのではなく、ぜひオリジナルの本編として改めて対峙出来ることを切に願う。
そしてその時の評価はぜひ90点以上を献上したい。
なぜなら、LoUにはそのポテンシャルがあるのだから。



総合評価:88点





The Last of Us (ラスト・オブ・アス)



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